ガウス・ボネの定理

測地的曲率

曲面上に描かれた滑らかな曲線の「測地的曲率」を定義しよう。

曲線上の各点において正規直交基底 \(\{e_1, e_2, e\}\) が定まるとする。 ただし \(e_1, e_2\) は曲面の接ベクトルで \(e\) は法線ベクトルとする。 このとき次の基礎方程式が成り立つのだった。

\[\begin{split}(de_1\ de_2\ de) = (e_1\ e_2\ e)\left( \begin{array}{ccc} 0 & \omega & \omega^1 \\ -\omega & 0 & \omega^2 \\ -\omega^1 & -\omega^2 & 0 \\ \end{array}\right)\end{split}\]

この座標系を用いて曲線の接単位ベクトルを次の形で表す。

\[t = e_1\cos\theta + e_2\sin\theta\]

これを外微分すると次式を得る。

\[\begin{split}dt &= de_1\cos\theta - e_1\sin\theta d\theta + de_2\sin\theta + e_2\cos\theta d\theta \\ &= (-\omega e_2 - \omega^1 e)\cos\theta - e_1\sin\theta d\theta + ( \omega e_1 - \omega^2 e)\sin\theta + e_2\cos\theta d\theta \\ &= (d\theta - \omega)(-e_1\sin\theta + e_2\cos\theta) - e(\omega^1\cos\theta + \omega^2\sin\theta)\end{split}\]

この第1項は接平面上の変化率、第2項は法線方向の変化率を表している。 特に接平面上の変化率は、\(t\) を90度回転したベクトル \(-e_1\sin\theta + e_2\cos\theta\)\((d\theta - \omega)\) 倍したものになっている。 これを測地的曲率と呼ぶ。

\[\kappa_g = d\theta - \omega\]

境界が滑らかな領域

曲面上の領域 \(D\) を考える。 ここでは \(D\) には穴がなく、境界 \(\partial D\) は滑らかな曲線であるとする。

\(\partial D\) に沿って測地的曲率を積分すると

\[\begin{split}\int_{\partial D}\kappa_g &= \int_{\partial D}d\theta - \int_{\partial D}\omega \\ &= 2\pi - \int_D d\omega \\ &= 2\pi - \int_D K\theta^1\wedge\theta^2\end{split}\]

ここでストークスの定理および第2構造式を用いた。 整理すると次式を得る。

\[\int_D K\theta^1\wedge\theta^2 + \int_{\partial D}\kappa_g = 2\pi\]

境界が区分的に滑らかな領域

\(\partial D\) が区分的に滑らかで \(V_0\) 個の角を持ち、 i 番目の内角を \(\alpha_i\) とする。

この場合の \(\int_{\partial D}d\theta\) を考えると、 i 番目の角で偏角 \(\theta\)\(\pi - \alpha_i\) だけジャンプするので、 積分値はその分だけ小さくなる。すなわち

\[\int_{\partial D}d\theta = 2\pi - \sum_{i=1}^{V_0}(\pi - \alpha_i)\]

従って次式を得る。

\[\int_D K\theta^1\wedge\theta^2 + \int_{\partial D}\kappa_g = 2\pi - \sum_{i=1}^{V_0}(\pi - \alpha_i)\]

穴が空いた領域

\(D\) に穴が空いている場合は、これを F 個の穴の空いていない領域に分割する。

\[D = D_1 \cup D_2 \cup \ldots \cup D_F\]

\(D_k\) で前項で求めた式が成り立つ。

\[\int_{D_k} K\theta^1\wedge\theta^2 + \int_{\partial D_k}\kappa_g = 2\pi - \sum_{i=1}^{V_k}(\pi - \alpha_i^k)\]

ここで \(V_k\)\(D_k\) の頂点数、 \(\alpha_i^k\)\(D_k\) の内角。 この式を k について和を取ることを考える。

左辺第1項は

\[\sum_{k=1}^F\int_{D_k} K\theta^1\wedge\theta^2 = \int_D K\theta^1\wedge\theta^2\]

左辺第2項は、隣接する領域と共有するエッジに沿った積分は打ち消し合うので、 結局 \(\partial D\) 上の積分だけが残るため次式となる。

\[\sum_{k=1}^F\int_{\partial D_k}\kappa_g = \int_{\partial D}\kappa_g\]

右辺第1項は

\[\sum_{k=1}^F2\pi = 2\pi F\]

ここまではシンプルだったが、右辺第2項は少しややこしい。 次の2つの項に分けて計算する。

\[\sum_{k=1}^F\sum_{i=1}^{V_k}(\pi - \alpha_i^k) = \sum_{k=1}^F\sum_{i=1}^{V_k}\pi - \sum_{k=1}^F\sum_{i=1}^{V_k}\alpha_i^k\]

準備として次のように記号を定める。

  • \(V, E\) = 領域分割全体の頂点数およびエッジ数
  • \(V_0, E_0\) = \(\partial D\) の頂点数およびエッジ数
  • \(V_k, E_k\) = \(\partial D_k\) の頂点数およびエッジ数
  • \(\alpha_j\) = \(\partial D\) 上の j 番目の内角

境界ループの頂点数とエッジ数は等しいので

\[V_0 = E_0, \quad V_k = E_k\]

これに注意すると次式が得られる。

\[\sum_{k=1}^F\sum_{i=1}^{V_k}\pi = \sum_{k=1}^F V_k\pi = \sum_{k=1}^F E_k\pi = (2E - E_0)\pi\]

続いて全内角の和の計算に入るが、これは \(\partial D\) 上の内角の和と \(D\) の内部頂点の内角の和に分けられる。

\[\begin{split}\sum_{k=1}^F\sum_{i=1}^{V_k}\alpha_i^k &= \sum_{\partial D}\alpha_i^k + \sum_{\bar{\partial D}}\alpha_i^k \\ &= \sum_{j=1}^{V_0}\alpha_j + 2\pi(V - V_0) \\ &= 2\pi V - \pi V_0 - \sum_{j=1}^{V_0}(\pi - \alpha_j)\end{split}\]

以上より元の式の右辺第2項は次式となる。

\[\sum_{k=1}^F\sum_{i=1}^{V_k}(\pi - \alpha_i^k) = 2\pi(E - V) + \sum_{j=1}^{V_0}(\pi - \alpha_j)\]

以上をすべて合わせると、オイラー数を

\[\chi(D) = F - E + V\]

と定義することにより次式が得られる。

\[\int_D K\theta^1\wedge\theta^2 + \int_{\partial D}\kappa_g + \sum_{i=1}^{V_0}(\pi - \alpha_i) = 2\pi\chi(D)\]

閉曲面

特に \(D\) が滑らかな閉曲面の場合には、次のシンプルな式が得られる。

\[\int_D K\theta^1\wedge\theta^2 = 2\pi\chi(D)\]